中古マンションを購入してフルリノベーションを検討するとき、多くの人が最初に気にするのは「総額でどれくらいの費用がかかるのか」という点です。費用の目安が分からなければ資金計画を立てられず、依頼先の選定や工事内容の検討も進みません。
フルリノベーションの費用は、専有面積や仕様グレード、築年数によって大きく変動します。一般的には1㎡あたり10〜18万円が相場とされ、60㎡のマンションであれば600〜1,000万円前後が目安となります。
ただし、水回りの移動や老朽化に伴う補修、設備のグレードによってはさらに費用が上がる場合があります。

ポイント
- 面積や仕様別に見た費用相場
- 内訳ごとの費用割合
- 実際の事例に基づくシミュレーション
さらに、費用が膨らむ原因や新築・部分リフォームとの比較、補助金制度や依頼先選びの注意点についても紹介します。
最後まで読めば、自分の条件に近いケースの費用目安を把握でき、リノベーションを進めるうえでの判断基準を得られます。
中古マンションのフルリノベーションにかかる費用相場
中古マンションのフルリノベーションにかかる費用は、専有面積と仕様グレードによって大きく変わります。
一般的な目安は1㎡あたり10〜18万円であり、この単価をもとに専有面積ごとの相場を算出できます。
専有面積別(40㎡・60㎡・80㎡)の目安費用
以下は専有面積ごとの費用相場をスタンダード仕様とハイグレード仕様に分けて整理したものです。
専有面積 | スタンダード仕様(10〜13万円/㎡) | ハイグレード仕様(14〜18万円/㎡) |
---|---|---|
40㎡ | 約400〜520万円 | 約560〜720万円 |
60㎡ | 約600〜780万円 | 約840〜1,080万円 |
80㎡ | 約800〜1,040万円 | 約1,120〜1,440万円 |
例えば60㎡の物件をスタンダード仕様でリノベーションした場合は600〜780万円、ハイグレード仕様では840〜1,080万円程度が目安です。

グレード(スタンダード/ハイグレード)による費用差
グレードの違いは主に使用する素材や設備機器のランクに表れます。スタンダード仕様では量産品のキッチンや浴室を採用することが多く、比較的コストを抑えられます。
一方、ハイグレード仕様ではオーダーキッチンや高機能浴室を導入するため、費用が大きく膨らみます。仕様を高めることで快適性は向上しますが、費用差は100〜300万円に及ぶこともあります。
首都圏と地方で異なる費用相場
施工エリアによっても費用は変動します。首都圏は人件費や材料費が高いため、地方と比べて同じ条件でも10〜20%程度高くなるのが一般的です。
地方では費用を抑えやすい一方、施工会社の選択肢が限られる場合もあるため、コストだけでなく工事品質とのバランスを考えることが重要です。

実際の事例に基づく費用シミュレーション
相場や内訳を見ても、やはり気になるのは「自分の場合はいくらかかるのか」という点です。ここでは、築年数や面積、仕様が異なる3つのケースを取り上げて費用シミュレーションを紹介します。
ポイント
- 築30年・60㎡をスタンダード仕様でフルリノベーションしたケース
- 築20年・80㎡をハイグレード仕様でフルリノベーションしたケース
- 築40年・50㎡を必要最低限の工事でフルリノベーションしたケース
築30年・60㎡をスタンダード仕様でフルリノベーション
築30年のマンションをスタンダード仕様でフルリノベーションした場合、総額はおよそ650〜750万円です。築年数が経過しているため配管の更新や下地補修が必要になるケースが多く、追加費用が発生しやすいのが特徴です。
費用内訳の目安は以下のとおりです。
ポイント
-
工事費:約350万円
-
設備機器費:約200万円(キッチン・浴室・トイレ)
-
設計料・諸経費:約80万円
-
追加工事:約50万円(配管更新・下地補修など)
築20年・80㎡をハイグレード仕様でフルリノベーション
築20年で80㎡のマンションをハイグレード仕様にした場合、総額は1,200〜1,400万円になります。オーダーキッチンや床暖房などを導入するため、設備機器費が大きく膨らむのが特徴です。
費用内訳の目安は以下のとおりです。
ポイント
-
工事費:約600万円
-
設備機器費:約400万円(オーダーキッチン・高機能浴室・床暖房)
-
設計料・諸経費:約120万円
-
追加工事:約100〜150万円(断熱材追加・収納造作など)
築40年・50㎡を必要最低限の工事でフルリノベーション
築40年のマンションを低コスト重視で仕上げると、総額は400〜500万円に収まります。間取りは現状維持とし、設備も量産品グレードに絞ることで費用を抑えることができます。
ただし、老朽化した部分の補修リスクは残る点に注意が必要です。
費用内訳の目安は以下のとおりです。
ポイント
-
工事費:約200万円
-
設備機器費:約150万円(量産品仕様のキッチン・浴室)
-
設計料・諸経費:約50万円
-
追加工事:約30〜50万円(老朽化補修)
フルリノベーションで費用が高くなる要因
ルリノベーションでは、見積もりの段階では予算内に収まると思っていても、工事が始まってから想定以上に費用が膨らむことがあります。
その主な要因は次の3つです。
ポイント
- 構造上の制約(配管・間取り変更)
- グレードの選択(素材・設備のランク)
- 工期延長や予期せぬ修繕
構造上の制約(配管・間取り変更)
マンションの構造には制限があるため、水回りの移動や壁の撤去が自由にできるわけではありません。
特にキッチンや浴室の位置を変える場合、配管の延長や床下の大掛かりな工事が必要になり、数十万円単位の追加費用が発生します。また、耐力壁の撤去はできないため、間取りの自由度が制限されることもあります。
こうした制約が、費用を想定よりも押し上げる要因となります。
グレードの選択(素材・設備のランク)
採用する素材や設備機器のグレードは、費用に直結します。フローリングを量産品にするか、無垢材にするかで数十万円の差が生まれます。
キッチンも標準仕様なら数十万円で済む一方、ハイグレード仕様にすると100〜200万円の追加となることもあります。仕様を上げれば快適性は増しますが、その分予算も膨らむ点を理解しておく必要があります。

工期延長や予期せぬ修繕
築年数が古いマンションでは、工事を始めてから予期しない不具合が見つかることがあります。
引用元:X
代表的な追加修繕とその費用目安は以下の通りです。
不具合の例 | 内容 | 追加費用の目安 |
---|---|---|
シロアリ被害・木材腐食 | 木部の交換や防蟻処理が必要 | 20〜40万円 |
配管や断熱材の劣化 | 新規配管工事や断熱補修 | 30〜50万円 |
下地や床の損傷 | 下地補強や床張り替え工事 | 20〜30万円 |
このように予期せぬ不具合が重なると、合計で50~100万円程度の追加費用になることもあります。工期も長引くため、余裕を持った予算計画とスケジュール調整が不可欠です。
部分リフォームと新築購入との費用比較
フルリノベーションを検討する際には、他の選択肢と比較することで判断がしやすくなります。
ここでは以下の3つの視点から解説します。
ポイント
- 部分リフォームのメリット・デメリット
- 新築購入とフルリノベーションのコスト比較
- 資産価値と居住満足度の違い
部分リフォームのメリット・デメリット
部分リフォームは、キッチンや浴室など一部を改修する方法です。費用は50〜300万円程度で済むケースが多く、工期も短いため生活への影響が少ないのが特徴です。
一方で、老朽化した配管や間取りの不便さといった根本的な課題は解消できません。結果として「最低限の快適さは確保できるが資産価値の向上にはつながりにくい」というデメリットがあります。
新築購入とフルリノベーションのコスト比較
新築マンションの相場はエリアによって異なりますが、首都圏では1㎡あたり100万円前後が一般的です。例えば60㎡の新築を購入する場合、総額は6,000万円程度が目安です
引用元:X
これに対して、同じ60㎡の物件をフルリノベーションする場合は600〜1,000万円前後で済むケースが多く、初期費用の差は非常に大きいことが分かります。

ただし、新築には最新の設備や長期保証が付くメリットがあるため、単純に費用だけで判断するのは危険です。
資産価値と居住満足度の違い
新築は資産価値を維持しやすく、将来的な売却でも有利になる傾向があります。特に築浅物件は市場での需要も高く、価格下落のリスクが小さいのが強みです。
一方、フルリノベーションは建物の構造が古いため資産価値は限定的ですが、自分好みの間取りやデザインを実現できるため、居住満足度は非常に高くなります。

つまり、資産性を重視するなら新築、暮らしやすさや初期費用を抑えるならフルリノベーション、と目的によって最適解は変わります。
補助金・減税制度で費用を抑える方法
フルリノベーションは高額な工事ですが、国や自治体の補助制度を活用すれば負担を抑えることが可能です。ここでは以下の制度について解説します。
ポイント
- 住宅ローン減税の適用条件
- 省エネリフォーム補助金の活用例
- 自治体ごとの支援制度
住宅ローン減税の適用条件
フルリノベーションを行い、一定の条件を満たせば住宅ローン減税が適用されます。
主な条件は次の3つです。
適用条件 | 内容 |
---|---|
工事後の床面積 | 50㎡以上であること |
耐震性能 | 工事後に耐震基準を満たしていること |
返済期間 | 10年以上の住宅ローンを利用すること |
床面積が50㎡未満の物件や、耐震性能を満たさない工事では対象外です。また、短期のリフォームローンではなく、返済期間が10年以上の住宅ローンを利用する必要があります。
これらを満たすことで、年末のローン残高の0.7%が控除され、最長13年間の減税効果を受けることができます。
省エネリフォーム補助金の活用例
国土交通省や環境省が実施する補助制度では、断熱性能や省エネ性能を高める工事が対象になります。
例えば、以下のような工事が補助対象です。
ポイント
-
高断熱窓への交換
-
高効率給湯器の導入
-
壁や床への断熱材追加
対象になれば数十万円の補助を受けられるため、ワンランク上の仕様にしても実質的な費用を抑えられる可能性があります。
自治体ごとの支援制度
築年数が古いマンションでは、工事を始めてから予期しない不具合が見つかることがあります。
代表的なものは以下の通りです。
ポイント
-
シロアリ被害や木材の腐食
-
配管や断熱材の劣化
-
下地や床の損傷
これらが見つかれば、50〜100万円程度の追加費用が発生するケースもあります。さらに工期も長引くため、人件費や管理費も増えることになります。

このように予期せぬ不具合が重なると、費用もスケジュールも大きく狂ってしまいます。リスクを抑えるには、契約前に施工会社へ“追加費用が発生した場合のルール”を必ず確認しておきましょう。
依頼先を選ぶ際に確認すべきポイント
フルリノベーションは高額な工事になるため、依頼先の選び方が最終的な仕上がりや費用に大きな影響を与えます。
この章では以下の3点について解説します。
ポイント
- 相見積もりを取る際のチェックポイント
- 費用だけでなく工事範囲・保証内容を比較する重要性
- 契約前に必ず確認しておくべき注意点
相見積もりを取る際のチェックポイント
見積もりは必ず複数社から取り、次の項目を比較することが大切です。
チェック項目 | 確認内容 |
---|---|
工事範囲 | どこまで工事が含まれているか具体的に記載されているか |
設備機器の仕様 | キッチンや浴室など、採用される製品のグレードが明確か |
追加費用条件 | どのような場合に追加費用が発生するかが明示されているか |
保証・アフターサービス | 保証期間や内容、アフター対応が含まれているか |
工事範囲が曖昧な見積もりでは、後から「想定外の追加工事」が発生しやすくなります。設備機器についても、同じ「システムキッチン」でもグレード差で数十万円の違いが出るため、仕様の明確化は欠かせません。
さらに、追加費用が発生する条件が事前に示されていないと、工事途中で予算を大きく超えるリスクがあります。最後に、保証やアフターサービスは施工後の安心感に直結するため、必ず確認しましょう。
費用だけでなく工事範囲・保証内容を比較する重要性
見積額が安い会社でも、工事範囲が限定的で必要な工事が含まれていない場合があります。その結果、追加費用がかさみ、最終的に高額になるケースも少なくありません。
保証期間が短い会社では、施工後の不具合対応に余分な費用が発生するリスクもあります。

費用だけではなく、工事範囲や保証内容を含めて比較することが重要です。
契約前に必ず確認しておくべき注意点
契約書や工事請負契約の内容は必ず細かく確認してください。
特に次の点はトラブル防止に直結します。
ポイント
-
工期が明確に記載されているか
-
支払い条件(着工金・中間金・残金)が妥当か
-
追加工事やキャンセル時の対応が規定されているか
これらを曖昧にしたまま契約してしまうと、予期せぬ費用増加や工期延長のリスクを負うことになります。

中古マンションのフルリノベーションに関するFAQ
リノベーションを検討している人から寄せられる質問は共通点が多くあります。この章では次の3つの疑問に答えます。
ポイント
- 費用が最も変動する要因は?
- 工期はどのくらいかかる?
- 管理組合への申請は必要?
費用が最も変動する要因は?
費用を大きく左右するのは専有面積と設備グレードです。例えば60㎡の物件なら、スタンダード仕様で600〜780万円、ハイグレード仕様で840〜1,080万円ほどかかります。
築年数が古ければ配管や下地の補修も必要になり、数十万円の追加工事が発生することも珍しくありません。
工期はどのくらいかかる?
フルリノベーションの工期は、標準的な規模で2〜3か月程度が目安です。ただしこれは「既存の間取りを活かした場合」の目安であり、大幅な間取り変更を行う場合や、水回りを移動する場合には工事工程が増えるため、3〜4か月かかるケースもあります。
さらに築年数が古いマンションでは、工事中に配管の劣化や下地の不具合が見つかり、追加補修が必要になることもあります。この場合は予算だけでなく工期も延び、予定より1か月以上長引くことも珍しくありません。

そのため、工期は「最低でも2か月半〜3か月、余裕を見て4か月」を想定してスケジュールを立てると安心です。引っ越しや仮住まいの契約を検討している方は、この点を必ず踏まえて計画を進めましょう。
管理組合への申請は必要?
マンションの場合、共用部分に関わる工事や大規模なリノベーションを行うときには管理組合への申請が必要です。
申請が通らなければ工事を開始できないため、契約前に必ず管理規約を確認し、必要な手続きを施工会社と一緒に進めておくことが安心につながります。
まとめ
「中古マンションのフルリノベーションはどれくらい費用がかかるのか?」「新築や部分リフォームと比べて本当にお得なのか?」「依頼先はどう選べば安心なのか?」
こうした疑問に答えてきました。
結論
-
中古マンションのフルリノベーション費用は1㎡あたり10〜18万円が相場。60㎡なら600〜1,000万円前後が目安になる。
-
費用が膨らむ主な原因は、配管移設などの構造制約、設備グレードの選択、そして予期せぬ修繕工事の3つ。
-
新築購入に比べて初期費用は大幅に抑えられるが、資産性は限定的。満足度や自由度を重視する人に向いている。
-
補助金や減税制度を活用すれば数十万円単位で費用を削減できる。
-
依頼先は必ず複数社から相見積もりを取り、工事範囲・保証・追加費用条件を比較することが不可欠。
最初の一歩として、自分の条件に合った見積もりを取り、費用感を把握することから始めましょう。オンラインで複数社を比較できるサービスを活用すれば、安心してリノベーション計画を進められます。